環境ビジネス

DRIVEtheARCプロジェクト

米国・北カリフォルニア高速道路沿いの急速充電ネットワーク構築・充電サービス運用とEVドライバー向けスマホアプリサービス提供によるEV行動範囲拡大効果を実証したDRIVEtheARCプロジェクト



【目的】

EVはクリーンな移動手段としての価値に加え、エネルギーを有効に活用する次世代の社会システム(スマートコミュニティ)において電力需給の調整等に貢献することが期待されており、スマートコミュニティを早期に実現させるためにもEVのさらなる普及拡大は重要な課題です。

米国は早くからEVに注目し、官による政策や規制、プロジェクトを通してEVの普及拡大に向けた様々な取組みを実施しています。特にカリフォルニア州は2025年までに150万台、2030年までに500万台のZEV (Zero Emission Vehicle)を普及させ、2035年までに全ての新車販売をZEVとする目標を掲げるEV先進地域です。

しかし、充電インフラが整備されたのは主に都市内であったことから、EVドライバーの行動範囲は限定的で、EVの普及を進めるには都市間の充電インフラを整備し、EVドライバーの利便性を高めることが望まれていました。

そこで、DRIVEtheARCプロジェクトでは、カリフォルニア州の中でも特にEVの販売台数が多い北カリフォルニアにおいて、都市を繋ぐ高速道路沿いに急速充電器を設置、併せて、EVドライバー向けの情報サービスを提供しました。これらの取組みによって、EV特有の電欠不安 (Range Anxiety)と充電不安 (Charging Anxiety)という心理的障壁を解消し、EVドライバーの行動範囲拡大に有効であることを評価すること、そして、EVおよび急速充電器に係るビジネスモデルを構築することを目的としました。


【概要】

DRIVEtheARCプロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(以下、NEDO)から日産自動車株式会社、Nissan North America, Inc. および 兼松株式会社 (以下、それぞれ、日産自動車、Nissan North America、兼松)が受託した実証事業であり、2013年の基礎調査「米国における電気自動車用充電インフラ関連技術に係る現状分析」および2014年の実証前調査事業を経て、2015年に開始、2021年に完了しました。

実施地域が海沿いリゾート地のモントレーからシリコンバレーとサクラメントを経由しアウトドアリゾート地のレイクタホに至る円弧状のルートであったため、サーフィンからスキーまでも楽しむことができるEVドライブを円弧状 (arc)のルートに設置する急速充電ネットワークである"Advanced Recharging Corridor (ARC)"によって実現するという意味で、"Surf to Ski, Emission Free"というキャッチフレーズと "DRIVEtheARC"という愛称で急速充電サービスとスマホアプリを2016年から2021年までEVドライバーに提供しました。 充電インフラ整備については、実施地域の26か所に合計57台の急速充電器 (50kW充電器 55台、100kW充電器 2台)を設置し、それまではEVの移動が事実上不可能であったサクラメント - レイクタホ間を繋ぎ、モントレーからレイクタホまでの総距離おおよそ500kmのEV移動を可能としました。







EVドライバー向け情報サービスであるスマホアプリは、充電統合アプリであるDRIVEtheARCアプリとEV専用ターンバイターンナビゲーションアプリであるEV Co-Driverを配信し、EVドライバーのEV利用範囲を制限させる心理的障壁である電欠不安と充電不安を軽減させて、より遠距離運転を促すことを目指しました。


【体制】

米国カリフォルニア州での円滑な実証事業推進の為に、NEDOはカリフォルニア州政府の経済促進知事室 (Go-Biz)や他関連政府機関との協力体制を組みました。また、実証事業の委託者である日産自動車、Nissan North Americaと兼松は米国の急速充電ネットワーク最大手企業であるEVgo Services LLC. (以下、EVgo)と協力体制を組み、DRIVEtheARCブランドの充電ステーション設置・運用および充電ステーションインフラサービスの支援を受け、EVgoの高品質な充電ネットワークサービスをベースにDRIVEtheARCプロジェクト独自の付加価値サービスをEVドライバーに提供することが出来ました。


【沿革】

2015年8月 実証事業 DRIVEtheARCプロジェクト開始

2016年10月 充電統合アプリ "DRIVEtheARC" リリース

2016年11月 DRIVEtheARC急速充電ステーションおよび充電スマホアプリ"DRIVEtheARC"運用開始とDRIVEtheARCプロジェクト・キックオフ・セレモニー

2017年9月 National Drive Electric Week参加2017年11月 50kW急速充電器 合計55台 設置完了

2019年1月 予約サービス開始

2019年4月 100kW急速充電器 合計2台 設置完了 (26箇所 合計57台の全てのDRIVEtheARC充電ネットワークの完成)

2019年6月 DRIVEtheARC充電ネットワーク完成セレモニー

2020年9月 ダイナミックプライシングサービスおよび"Place Shift"サービス開始

2020年9月 EV専用ターンバイターンナビゲーションアプリ "EV Co-Driver" リリース

2020年9月 サーベイ実施

2021年2月 実証事業 DRIVEtheARCプロジェクト完了





【実証事業で展開したシステム】


充電ステーション

CHAdeMOとCCS Combo両方のプラグを持つ50kW出力・100kW出力急速充電器を設置し、Nissan LEAFはもとより、全ての急速充電ポートを持つEVの充電をサポートしました




航続距離範囲内の充電ステーション位置確認、充電ステーションおよび充電器のリアルタイム状態の見える化、過去の充電履歴実績情報、3時間先までの混雑度見通し情報、アプリ操作による充電、予約機能、ダイナミックプライシング機能、より期待待ち時間の少ない充電ステーションへ案内する"Place Shift"機能を包含する充電統合スマホアプリ "DRIVEtheARC"をiOS/Androidスマホユーザー向けに提供し、EVドライバーの電欠不安や充電不安を軽減し、長距離運転行動を促しました。






EV専用ターンバイターンナビゲーション スマホアプリ "EV Co-Driver"

出発時のバッテリー残量と目的地を入力するだけでEVの運転を開始出来、その後はナビゲーションのガイドと充電ガイドに従うことで目的地までの運転を最短時間で行うことをサポートするEV専用ターンバイターンナビゲーション スマホアプリ "EV Co-Driver"をリリースし、EV運転行動変容につながる可能性を見出しました。




【実証成果】


成果1: 利用頻度向上と行動範囲拡大

運転行動実績および充電行動実績の蓄積データを分析し、主にシリコンバレー、サクラメント メトロポリタン エリア居住の40kWh以上のバッテリー搭載EVのドライバーが100km超の運転・充電行動を起こす回数が増加している傾向を確認しました。




成果2: 充電行動の変化

予約サービス、混雑度に基づく時間帯別価格のダイナミックプライシングサービス、混雑時の負荷平準化にむけた期待待ち時間の短い充電ステーションへのガイドである"Place Shift"サービス、100kW急速充電器サービスを通じて、充電利用が増加しながらも利用時間帯最適化により混雑緩和するというEV運転行動様式の変化を促すことが出来ました。






成果3: EV関連ビジネスへのニーズ掘り起こし


EV利用ユーザーを対象としたサーベイ・アンケート等の定性的なデータ分析により急速充電ネットワークおよび情報サービスに関する潜在的ニーズや有益性を確認できました。





成果4: ビジネスモデルの実現性検討


充電アプリを活用したMVMO的な充電サービス事業であるeMobility Service Provider (EMSP)については、現時点では市場規模がまだ事業規模に達していないものの、今後のEVの普及の加速に伴うEV充電サービス市場拡大により、事業成長が期待されます。

EV専用ターンバイターンナビゲーションナビゲーションアプリに関しては、最適な充電ステーション経由のルートをダイナミックに案内し続けるターンバイターンナビゲーション機能を提供する世界的にも先行したサービスで、今後のEV本格普及期でニーズが拡がると見られます。


【今後の展望】

クルマは情報ネットワークサービスと繋がることによって、単なる移動媒体から社会のアセットへとその価値が高められて行くと考えています。結果として、クルマは「売って終わり」ではなく「クルマのライフサイクル全体」を包含するものにシフトして行き、また情報ネットワークサービスはEVのドライブ体験の向上のみならずEVの社会性を推進するものに進化して行くと思われます。

EV普及の先にはカーボンニュートラル達成という壮大なチャレンジがありますが、多分野の企業・政府・ユーザーの全てのレイヤーで同期した取組みが今後ますます重要性を持ちます。

カーボンニュートラルに向けたEVおよび充電インフラの進歩に合わせ、EV関連の情報サービスへの取組みを今後も続けていきます。


資料

NEDO Channel - スマートコミュニティ事業の紹介 「米国加州北部都市圏におけるEV行動範囲拡大実証事業」"DRIVEtheARC"

https://www.youtube.com/watch?v=kEPdEhBKAXM


NEDO Channel - "DRIVEtheARC" Introduction of NEDO Smart Community Project in Northern California

https://www.youtube.com/watch?v=RvVmL20xHu8


成果報告書 (成果報告書データベースのユーザー登録が必要です。)

https://seika.nedo.go.jp/pmg/


事後評価委員会資料および評価報告書

https://www.nedo.go.jp/introducing/iinkai/ZZAT09_100006.html

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