標準

社長メッセージ

2017年6月に代表取締役社長に就任いたしました。

 2019年の創業130周年に向けた中期ビジョン「VISION-130」のもと、「事業創造で成長し続ける企業」として、「健全な財務体質の維持」と「収益基盤の拡大」の両立を経営目標にしています。「VISION-130」の目標達成をひとつの通過点とし、長期的な視野をもって先進的な変化を先取りすることで、着実な成長を実現し企業価値向上を図って参ります。

社長就任にあたっての抱負と決意

 社員やそのご家族が誇れる企業にしたい、また企業価値を高めて社会貢献ができる企業にしたいと思っています。そのために、私の使命は、これまで以上に当社グループの成長への道筋を鮮明にし、新たなビジネスモデルを構築することだと認識しています。現在推進中の「VISION-130」は、その通過点であり、さらにその先の成長を目指して参ります。それにより、企業価値を高め、日本経済に寄与する企業グループでありたいと考えています。

 会社としては、当社グループが持つ機能を通して、日本と海外あるいは三国間などにまたがるサプライチェーンを担っていきます。また、時代を先取りするような先進的なことにも取り組んでいきたいと思っています。さらに、ビジネスをマネージできる人材を育て、専門性の高い企業になっていきたいと考えています。

 これまで、国内や米国で電子機器の営業部門を長く経験し、その後は経営企画にも携わってきました。近年いくつかのM&Aを手掛けたことにより、今後の事業拡大に向けたノウハウも蓄積して参りました。また、若手の従業員と、先進技術などのテーマで横断的なチームをつくり、情報収集や研究を進めてきました。こうしたコミュニケーションを大切にしながら、これからは社長として、より大きな判断での舵取りを行っていく所存です。

兼松グループの現状と課題やリスク

 当社グループはこれまで事業の選択と集中により、経営基盤の盤石化を推進して参りました。2014年4月より実施している中期ビジョン「VISION-130」では、強みを有する得意分野に注力し、事業の横展開・深掘りに取り組んでいます。4つのセグメントに集約された得意分野において、商社の基本であるトレーディングに軸足を置いたビジネスモデルを展開しており、国内外でのサプライチェーンの中で、お取引先との共生と発展による収益の拡大を図っています。しかしながら、商社の本来の役割は、社会に新しい価値観を生み出すべく、事業を創造することに他なりません。当社グループは長期にわたり経営基盤の再構築に注力したことにより、事業創造のスピードがやや遅くなってしまったことは否めません。

 また、経営課題については、中期的には、収益を確実に生み利益率を高める新規事業の開拓のための仕組みづくりや、ポートフォリオの見直しが急務であると考えております。長期的には、人工知能(AI)やIoTといったテクノロジーの進化により、社会のニーズや生活習慣が変化していくことや、日本の場合は、国内の人口減少や市場の縮小が進むことで、従来のトレーディングの業務に大きな転換期を迎えるであろうと捉えています。

 こうした経営課題やリスクを踏まえ、時代の変化をビジネスチャンスとするために、新たな事業を生み出す企業風土を復活させなければならないと感じています。創業当時から、当社グループは開拓者精神と積極的創意工夫を第一の信条として企業活動を行って参りました。その遺伝子を受け継ぐ者として、今、あらためて役員、従業員が一体となって、事業創造に向けた熱意を醸成させていこうとしています。

 新たな事業の獲得と規模の拡大においては、M&Aの活用も積極的に実施していきます。2017年3月期には、携帯電話販売会社の買収や、カードプリンター事業の承継などを実施しました。M&Aを実施した企業に対しては、明確な方針・目標を打ち立て、お互いの企業風土や人材を尊重しながら融合していくことで、シナジーを早期に実現させていきます。

新たな付加価値を提供するビジネスを構築するとともに、様々なサプライチェーンの中にある各パーツをマネージしていくような、機能的なビジネスモデルの構築を急ぎます。そのために、従業員の質の向上を図ることを目的とした人材育成も強化し、意識改革を図らなければならないと思っています。

2017年3月期の業績の評価

 2017年3月期は、米国では堅調な内需を背景に景気が順調に拡大し、中国やアジア・新興国においても減速感はあるものの成長を維持しました。国内では、個人消費の低迷が続く中、政府の経済政策や日銀の金融政策の効果が下支えし、景気は緩やかながら回復基調で推移しましたが、欧州の政治リスクや米国の政策動向など海外情勢の懸念材料もあり、先行き不透明な状況が継続しました。

 当社グループは当連結会計年度より、国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。2017年3月期の業績は、収益は前期比1.1%増加の6,756億円となりました。営業活動に係る利益は、前期比20.6%増加の226億円となりました。主に、ICTソリューション事業やモバイル事業の好調、市況回復により利益が改善した畜産事業などを中心に、実業面は順調に推移しました。しかしながら、投資有価証券の時価評価に伴う金融費用の計上、および持分法投資損失の計上の結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、前期比10.2%減少の80億円となりました。

 最終利益のこの結果については、真摯に受け止めております。持分法会社については当社によるコントロールは限定的ということもあり、今後は、持分法投資損失などのリスクをミニマイズするためにも、投資先の経営による当社への影響の見極めをより重視していきます。

 連結財政状態は、資本のうち、親会社の所有者に帰属する持分※1については、利益剰余金の積上げや、株価上昇によるその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の増加等により、1,004億円に増加しました。その結果、親会社所有者帰属持分比率※2は前期末比0.3ポイント改善の20.9%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.6倍と、財務体質の健全性を維持しております。

*1 JGAAPの自己資本 *2 JGAAPの自己資本比率

「VISION-130」の進捗と計画達成への意気込み

 「VISION-130」は、さらにその先の成長に繋がる通過点であり、計画の達成は必須と考えております。

 市場は変化が進み、より専門性を求めるようになっています。そして、その要求に応えられる企業は必ず収益を挙げています。即ち、役割に対する対価は明確ということです。こうした状況下、当社としては、連結グループにおいて強みのある事業分野や、それぞれが有する専門性を活かし、更なる収益基盤の拡大を図っていきたいと考えています。

 また、最終年度2019年3月期の目標である連結当期純利益※3150億円の達成は、視野に入っていますが、それをより確かなものとすると同時にその先の成長も見据え、既存のビジネスだけでなく、有効な投資やM&Aによる事業拡大を考えています。現在の4セグメントは、過去の集中と選択の流れで構成されたものです。その中で様々な事業を行っていますが、やや縮小あるいは集約され過ぎた分野もあります。そのような分野の再検討を行い、成長の萌芽がある事業については、拡大できるよう手をかけていく必要があると考えています。機会を捉え、得意分野における実業に根差した投資や事業拡大を加速して参ります。

 自己資本※41,200億円超の目標については、確実に達成していきます。今後、成長を担う投資やM&Aの規模が大きくなっていく可能性を想定すれば、自己資本はさらに厚くしていくことが必要ですので、収益を向上させ、着実に積み上げて参ります。投資と内部留保をバランスよく実施していきたいと思っております。

※3 IFRSの親会社の所有者に帰属する当期純利益  ※4 IFRSの親会社の所有者に帰属する持分

得意分野の強みと成長への道筋

 電子・デバイスセグメントの強みは、専門性の高さと連結経営です。兼松エレクトロニクス株式会社で展開しているICTソリューション事業においては、専門知識やノウハウと付加価値あるサービスの提供をさらに推し進め、収益性を一層向上させていきます。また、モバイル事業では2016年に株式会社ダイヤモンドテレコムを買収し、2017年4月に兼松コミュニケーションズ株式会社との統合を果たすなど、規模の拡大を継続しています。今後は、AIやデータビジネスなど、新しい価値観の事業への取組みについても検討を進めていきます。

 食料セグメントは、当社グループの重要事業のひとつです。輸入取扱量ではトップシェアを誇る商材もあり、日本の食市場にとっても重要な事業、大きな影響力をもつと自負しています。顧客ニーズの変化や市場の変遷などに応えるため、供給元の確保や、差別化を図るべく付加価値の拡大に専心するとともに、長年のネットワークを駆使したサプライチェーンの強化や新たなビジネスモデルの提案を行っています。

 鉄鋼・素材・プラントセグメントは、鉄鋼事業ではパートナーとの信頼構築、プラント事業では海外遠隔地を主とした市場形成、エネルギー事業では連結でのオペレーション、化学品事業は医薬品や医農薬中間体のような専門性に特化したビジネスに強みがあります。それぞれの事業規模は比較的小さいのですが、専門性の高い関係会社を持つという連結経営が強みです。また、鉄鋼、素材(エネルギー・化学品)、プラント・船舶それぞれの分野にまたがるビジネスのシナジーを追求しています。これらの特色ある独自の事業群の中から、未来の柱事業になる分野を見極め拡大していくのが急務だと考えています。

 車両・航空セグメントは、業界を代表する取引先を持つことや、長年の経験と世界的なネットワークにより、豊富な情報量を誇り、提案力や課題解決力といった強みをもっています。ネットワーク化(Connected Car)、自動運転化といった次世代自動車市場でのビジネスチャンスのみならず、航空宇宙分野でも新規事業の創出に注力するなど、兼松グループの未来を握る分野のひとつと言っても過言ではありません。

投資方針について

投資については、4セグメント全ての分野を平等に検討するとともに、必要に応じて新たな分野についても検討し、適切な投資を行っていきます。投資にあたっては、市場の分析と事業の将来性、役員・従業員や企業風土、そして本当にシナジーがあるのかといった見極めを慎重に行うことが重要です。社内外のいろいろな意見や知見も活かし、総合的に判断していきます。営業キャッシュ・フローで得られた資金を基にした投資を原則としつつ、資金調達手段の多様化も図っていきます。既に、普通社債の発行を目的とした300億円の発行枠を設定するなど、将来の成長に必要な資金を機動的に調達できる体制も構築しています。

経営基盤の強化について

コーポレート・ガバナンスにつきましては段階的に強化を進めております。2017年6月の株主総会で、社外取締役を1名増員し、これまでの学識者と他業種での経営経験者に加え、他商社での経営経験のある社外取締役が選任され、3名となりました。また、取締役会と、執行役員等で構成する経営会議の議長を別に選定するなど、経営と業務執行の機能を明確にしていくことで、コーポレート・ガバナンス体制の一層の強化を図っております。

 商社の経営資源として最も重視される人材については、専門性の高い企業グループとしての成長に不可欠な条件として、今後はマネジメント能力の強化を図る教育にも注力したいと考えています。「兼松にならビジネスマネジメントが任せられる」というお取引先の認識をつくることが今後の責務です。海外現地法人のナショナルスタッフについてもグローバルな教育プログラムのシリーズ化や、今後はマネジメントクラスの採用についても検討したいと思っています。さらに、ダイバーシティについては、当社グループの基本的な遺伝子の中に組み込まれているものと信じています。商社には多種多様な価値観が不可欠で、その価値観の違いの中で、対話し、考え、それを尊重し合うことで企業活動を継続してきました。これからもその意識を強め、ダイバーシティマネジメントを実施して参ります。中でも、女性の活用については、国内の管理職や海外現地法人の社長としての登用など実績もありますが、さらに若年層の成長に期待し、門戸を大きく広げていきたいと思っています。

 また、兼松グループのCSR活動に関しては、企業理念の中で「会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果たすこと」を挙げています。社内横断的なCSR委員会を設置し、必要に応じた全社的な活動方針を立案、実行しています。お取引先のサプライチェーンへの供給や調達を行う際への対応として、「サプライチェーンCSR行動指針」を定めるなど実践的な体制を整備しているほか、環境保全に資するビジネスとして森林保全や地域住民の生活の維持、生物多様性の保全などを目的とした活動にも取り組んでいます。

 社会貢献活動としては、被災地でのボランティア活動など地域を通じた活動や、神戸大学経済経営研究所と共同で兼松貿易研究基金を設立するなど教育機関を通じた活動を行っております。

 今後も企業価値を向上させ、兼松ならではの社会貢献に努めていきたいと思っております。

2018年3月期見通しと配当について

2018年3月期の連結業績は、収益を前期比3.6%増の7,000億円、営業活動に係る利益は前期比10.5%増の250億円、親会社の所有者に帰属する当期純利益は前期比49.1%増の120億円を計画しています。

 また、当社は株主の皆さまへの利益還元を経営の最重要課題であると認識しております。2014年3月期に復配して以来、毎期増配を継続しており、2018年3月期においても、前期より1円増配の1株当たり7円の配当を計画しています。引き続き成長のための投資や、株主の皆さまへの還元のバランスを取りながら、連結配当性向25%を目処とし、安定的かつ継続的な配当を実施していきたいと考えています。

 今後もステークホルダーの皆さまからの期待にお応えすべく、企業価値の向上に取り組んで参ります。

clear both
clear both