IR [投資家情報]

社長メッセージ

(統合報告書2019より)

 2019年3月期より6カ年の中期ビジョン「future 135」を実施しています。 重点施策として「基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大」「技術革新への対応」「持続的成長を実現するための経営インフラ確立」を掲げ、安定した収益構造と財務構造を武器に、ユニークな総合商社像を目指し、次なる成長のステージを進んでいます。

1.兼松の社会的使命

 兼松グループは、本年で創業130年を迎えました。1889年から3世紀を跨ぐ企業活動の根幹に流れる開拓者精神のもと、広く国際社会に目を向け、事業を通じて社会的課題の解決に挑戦することが使命であると捉えています。これまでも、国内経済の発展、さらには世界経済の活性化に寄与すべく、新たな付加価値を提供するビジネスを創造することで、社会での重要な役割を果たしてきました。現在は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念に賛同し、他の商社が手掛けない兼松ならではの分野で、社会の動きや課題解決に根ざした領域の深掘りを促進しています。中期ビジョン策定をはじめとして、各プロジェクト開発の選定段階からSDGsとの関連性を探求することにより、この1年間で社内や取引先、サプライヤーがSDGsのキーワードに敏感になってきたと実感しています。サプライチェーン全体をコントロールする機能や、国や地域によって異なる文化や発展のレベルを見極め調整する役割を担う商社として、ビジネスの結節点にある我々がSDGsを発信していくことが非常に重要であると考えています。

これまでも、国内経済の発展、さらには世界経済の活性化に寄与すべく、新たな付加価値を提供するビジネスを創造することで、社会での重要な役割を果たしてきました。現在は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念に賛同し、他の商社が手掛けない兼松ならではの分野で、社会の動きや課題解決に根ざした領域の深掘りを促進しています。中期ビジョン策定をはじめとして、各プロジェクト開発の選定段階からSDGsとの関連性を探求することにより、この1年間で社内や取引先、サプライヤーがSDGsのキーワードに敏感になってきたと実感しています。サプライチェーン全体をコントロールする機能や、国や地域によって異なる文化や発展のレベルを見極め調整する役割を担う商社として、ビジネスの結節点にある我々がSDGsを発信していくことが非常に重要であると考えています。

 従業員の一人ひとりが、社会的使命や社会的インパクトを理解し常に念頭において行動するようになるには、経営者が率先して、企業の存在意義や成長の道筋について明らかにしていくことが肝心であると認識しています。 2018年10月には、海外拠点やグループ会社からの閲覧もできるグループ内ウェブサイトを開設するなど、タイムリーな情報や経営層からのメッセージを積極的に発信しています。

また、金融安定理事会の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」についても理解を深め、気候関連のリスクと機会について考察し、将来の事業にその要素を含めていく必要があると考えています。

2.兼松の現状と課題

 2019年3月期から実施している中期ビジョン「future 135」では、長期的な視野をもってさらに成長を続ける企業であることをイメージしています。

 当社グループは、商社の基本であるトレーディングに軸足を置いたビジネスモデルを展開しています。市場価格変動の激しい資源投資等は行っていませんが、幅広い事業分野を活動のフィールドとするとともに、得意とする分野では専門性を高めたプロフェッショナル・ビジネスを展開するユニークな存在として認知されています。こうした事業分野において一段の規模の拡大をめざすとともに、得意分野での付加価値を追求することにも主眼を置き、それぞれの分野でナンバーワンと称されるような専門性の高い領域を多数有する企業グループでありたいと考えています。また、市場動向を注意深く読み解きながら、AIやIoTなどに代表される先進技術を軸とした事業の発掘にも注力しています。

 一方、当社グループが抱える経営課題は、これまでにも、長期にわたる経営基盤再構築の過程で、事業創造のスピードがやや鈍化していることを挙げてきました。スピード感のある経営判断を下すには、それぞれのプロセスで経営全体を見通すことのできるマネジメントの知識を蓄えた人材が必要です。経営人材の育成強化が当社の抱える経営課題の最大の解決策となると捉え、中期ビジョンの6年間で、経営に関わる知識の徹底的な底上げを実施し、事業創造のスピードアップを実現する機動的な企業体として再構築しているところです。具体的には、2019年7月にこれまでの人材育成制度を強化・体系化し、入社から10年間で卒業となる「兼松ユニバーシティ」という研修制度を立ち上げました。役職者層だけでなく、性別・年代に関わらずそれぞれの適性に沿った規模のマネジメント教育を施していきます。お取引先から、「兼松にならビジネスマネジメントを任せられる」という信頼を勝ち得ることが、今後の商社としての在り方を方向付けることにもなると考えています。私が社長として誇りに思うのは、当社グループの社員の質の高さです。さらに人材育成を強化することにより、将来的にありたい姿へ会社を牽引していく人たちが揃ってくると感じており、当社グループの将来には非常に期待を抱いています。経営者として、20年、30年といった長期的なスパンで人材の在り方を見据えることで、社内の一体感や信頼感を生み出していければと考えています。

3.2019年3月期の業績の評価

 2019年3月期は、グローバルな金融市場の変調や貿易摩擦の深刻化などが懸念されながらも、国内外ともに、引き続き緩やかな成長が続いています。当社グループにおいては、原油価格下落の影響を受けたエネルギー事業や、米国による経済制裁の影響により中東向け取引の減退を受けた車両・車載部品事業、また、米中貿易摩擦の影響を受けた半導体部品・製造装置事業で減収減益となった一方、旺盛なIT投資需要を受けたICTソリューション事業や、携帯電話販売代理店子会社の統合効果が継続したモバイル事業、配合飼料価格が安定推移した食糧事業、官公庁向けや海外での航空機部品取引が好調だった航空・宇宙事業などが増収増益となり、全体を牽引しました。その結果、2019年3月期は増収増益となり、税引前利益は過去最高益を更新しました。

 また、利益剰余金の積上げにより、自己資本比率が上昇しました。

 親会社所有者帰属持分比率※は22.8%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.4倍となりました。

 しかしながら、これらの結果は長期的に目指す成長の過程に過ぎません。次世代社会に向け、兼松グループがどのように成長し、どのように社会に貢献していくのかを見極め、さらなる高みを目指していきます。

(注) 当社グループは2017年3月期より、国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。
※ 日本基準の「自己資本比率」

4.中期ビジョン「future 135」重点施策

 「future 135」では、これまでに確立した健全な財務基盤を維持、強化しながら、得意分野の深化に注力し、これまでに無い新しい技術によるビジネス構築に挑戦することで、積極的な事業拡大や事業創造を進めています。最終年度である2024年3月期の目標は、連結当期利益250億円、ROE13~15%、総還元性向25~30%です。3つの重点施策をもって、成長への道筋を歩んでいます。

Ⅰ .「基盤となる事業における持続的成長と、事業投資による規模拡大については、既存事業が当社グループの収益の基礎であることに変わりは無く、これまでどおり既存のビジネスは持続的に確実に成長させます。日本の食を支えている食料事業などが代表的な例です。今後、テクノロジーの進化やニーズの変化により淘汰される事業と新たに生まれてくる事業の入れ替わりが図られる中、既存事業の拡大には特に創意工夫が必要と考えています。技術革新による効率化など投資機会が増える可能性もあり、取りこぼしが無いよう事業連携を進め、また適切な投資、知見の深い分野での企業買収の活用による規模拡大を考えています。「future 135」は6年という長めのスパンであるため、それぞれが一定の目標、例えば既存事業の収益を2倍に拡大するようなイメージを持ち、その目標のために何をすべきかを考え、取り組む必要があります。

Ⅱ . 次に、IoT やAI などに代表される「技術革新への対応」は、当社グループの将来を築くための欠かせないキーワードです。あらゆる分野でIoT等の新しい技術の応用や融合が進んでおり、構造の変革が求められる中、電子・デバイスセグメントでは新たなテクノロジーによる付加価値の高いビジネスモデルの提案に注力していきます。さらに、これからの商社は事業領域に関係なく、横断的な付加価値を創造していかなければなりません。先進技術を有する部門と、別の部門やお取引先との連携を推進し、広範な事業領域を超えた連携による事業創造を一層強化していきます。2019年3月期から、先進技術・事業連携担当役員を設置しており、技術革新への対応による事業創造を加速させ、さらなる成長の柱として育てていきます。社会の動きとともに新たなビジネスを構築することで、当社グループの使命を果たしていきたいと考えています。

Ⅲ . 3 つ目の「持続的成長を実現するための経営インフラ確立」については、全ての基本は人であると認識しており、そのためにやるべきことは多くあると思っています。まずは、経営人材の育成が急務であり、研修の新設や、従業員の質の向上を目的としたその他教育を充実させます。また、従業員満足度(ES)を高めるための施策や働き方改革も実施していきます。

 一人ひとりが異なる価値観を持っているので、全員が100パーセント満足という結果を導くのは非常に難しいことです。しかしながら、仕事にやりがいを見出し、創意工夫を楽しむような仕組みをつくり、コミュニケーションを活性化しながら運用していくことが重要です。さらに、グローバルビジネス拡大に向け、主要海外拠点における専門的な事業会社数の拡大を目指します。そのための社内制度の充実も図っていきます。これは中期ビジョンの前半で完了させる予定です。さらに、経営のおかれた状況やリスクを計量的に把握するシステムも導入していきます。

5.中期ビジョン「future 135」 1年目の進捗

 1年目を終えて、ポートフォリオの入替えや先進技術への取組み、事業連携、連結経営の推進など、少しずつではありますが着実に前進ができたと確信しています。

 一方で、成長のスピードが若干遅いという印象が残りました。事業創造や拡大のためには、ビジネスの萌芽を捉え、将来の収穫を見極める調査や判断をして初めて事業開発が実現します。その実行段階までのスピードをさらに速めなければと感じています。精度の高い判断を下すのに最も重要なのは、現場の情報量と目利きです。これを養うには、先ほど課題として挙げた、経営の知識を備えた人材の育成が急務であり不可欠なのです。

 セグメントごとの進捗としては、安定収益基盤である電子・デバイスセグメントの兼松エレクトロニクス株式会社が展開するICTソリューション事業の市場は、技術革新の只中におり、今後、さらなるビジネスチャンスが訪れると捉えています。過去30年間において、アナログからデジタルという技術革新を経ることで、当社グループの電子・デバイスセグメントの強化・拡大が進み、当社グループの主力部門となりました。現在はデジタルトランスフォーメーションの概念のもと、企業経営のさらなるデジタル化の波が訪れており、この流れを捉えることにより、今後の電子・デバイスセグメントの大きな発展に繋がると予測しています。

 高い競争優位性を維持する食料セグメントについては、材料や加工品、調理食品などを扱う分野で、新規技術や商品の開発が特に重要性を増しており、この領域での展開をさらに積極的に行っていく必要があると考えています。

 鉄鋼・素材・プラントセグメントでは、引き続き、鉄鋼、化学品、機械の分野で事業投資やM&Aを軸に規模の拡大を目指し、専門性の高い人材の取り込みも行っています。

 車両・航空セグメントでは、豊富な情報量を駆使した提案型、課題解決型のビジネスモデルが強みであり、次世代自動車市場での事業拡大、宇宙事業など、順調に進んでいます。

6.中期ビジョン「future 135」 事業別の成長イメージ

 「future 135」では「規模の拡大」「付加価値の獲得」「イノベーション投資(種まき)」を成長イメージの軸としています。まず、「規模の拡大」では、顧客・市場・シェアの拡大を図ることが目的で、競争力の高い事業領域を多く抱える電子・デバイスセグメントでの投資に加え、鉄鋼・素材・プラントセグメントの機械、化学品事業へのてこ入れも必要となっています。「付加価値の獲得」では、主として食糧、食品、鉄鋼などの既存ビジネスへの機能追加に取り組んでいます。そして、未来への種まきである「イノベーション投資」については、これまでの事業投資と同じようには考えることはできません。AIやIoTといった先進技術を軸として、部門を超えた連携を実現しながら新規事業の創生に取り組んでいます。

 また、先進技術や事業連携の重要性に鑑み、2018年11月には、全事業部門が連携する「先進技術・事業連携チーム」を組成し、担当役員を設置しました。グループ内や海外との事業を連携していくことにより新しいビジネスの創出を加速していきます。技術革新への対応を強化し、事業創造とイノベーション投資を推進することで、効果的な事業投資による規模の拡大や付加価値の獲得を追求していきます。

7.中期ビジョン「future 135」 成長への投資について

 2019年3月期には、強みと知見のある分野に約80億円の新規投資を実行しました。電子・デバイスセグメントでは、国内のカード・プリンター事業会社である株式会社ジー・プリンテックの完全子会社化を実施し、早々に業績への貢献を果たしました。また、車両・航空セグメントにおいて、米国のサイバーセキュリティ投資ファンドへの参画を果たしました。米国のベンチャーキャピタルAllegisCyber Capital社が設立するファンド「Cyber InnovationPartners II」に参画することで、市場規模の拡大が見込めるサイバーセキュリティ分野の先進技術の発掘とその成長に向けた資金を提供していきます。さらに、中古航空機の購入により航空機部品事業の資産の積上げを行いました。そのほかには、韓国での鋼板加工メーカーへの持分法出資や、中国での畜産一次加工製造販売会社の設立を実施しました。

 投資案件としては、大学発のベンチャーキャピタルであるウエルインベストメント株式会社と業務提携を締結いたしました。これは、兼松の営業基盤とウエルインベストメント株式会社のベンチャー投資基盤とを連携させ、有望な先進技術やビジネスモデルを有する国内外のベンチャー企業を発掘し育成する体制を強化することを目的とするものです。今後、宇宙・AI・ニューロテクノロジー・合成生物学・量子技術など、長期的な研究開発活動によるイノベーションが、新興産業の創出や既存産業の革新を起こし、持続的な経済成長をもたらすと期待される領域を重点的に開拓することを視野に入れています。これらの中期ビジョン2年目以降に設定している投資案件では、約600億~1,000億円の範囲で、「規模拡大」「付加価値向上」「イノベーション」の3つの投資軸を各セグメントに展開し、国内外の具体的なパイプラインを検討しています。

 なお、投資については、継続した成長を目指しつつも、決して将来の負担になるような投資を行わないよう、慎重に吟味して実施していきます。そのためにも、投資基準による投資判断を厳格にしつつ、自らの専門分野を能動的に選定し狙いの精度を研ぎ澄ませていきます。

8.経営基盤について

 コーポレート・ガバナンスにつきましては、2019年3月期に経営体制の刷新を実施しました。取締役会を機動的かつ効率的な適正人数として経営の監督と執行の分離を進めるとともに、女性社外取締役の起用によるダイバーシティの推進を図りました。また、海外ビジネスの伸張を図るべく、執行役員の拡充を果たしました。さらに、2019年3月期より取締役に対する業績連動型株式報酬制度を導入し、取締役の報酬と当社の業績および株式価値との連動性をより明確化することで、株主、投資家の皆さまとの価値共有をより意識できる体制となりました。

 経営課題として先にも述べましたとおり、経営人材の不足に危機感を持ち、戦略的な育成を推進していきます。当社グループの根幹としてダイバーシティの考え方は深く浸透しており、多様性を認めた上で、必要な人材を育て活用していくという土壌があります。また、働き方改革への取組みもさらに積極的に推進しています。働きやすさをモチベーションへと昇華させ、収益へと結び付けていくことが本来の姿だと考えています。こうした改革の真意を説き、すみずみまで浸透させていく努力をするのが経営層の務めのひとつだと考え、一歩ずつ真摯に取り組んでいます。

9.2020年3月期の見通しと、ステークホルダーへのメッセージ

 2020年3月期の連結業績は、収益を前期比2.2%増の7,400億円、営業活動に係る利益は前期比2.1%増の310億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比2.4%増の170億円を計画しています。

 また、当社は株主の皆さまへの利益還元を経営の最重要課題であると認識しており、2014年3月期に復配して以来、2019年3月期まで増配を継続して参りました。「future 135」では総還元性向の目標を25~30%と掲げ、引き続き守りと攻めのバランスをとりながら、確実な成長を軌道に乗せることで、継続的に株主の皆さまへの責任を果たして参ります。

 当社グループは130年目の成長企業であると宣言することで、経営基盤から事業創造にいたる企業活動の全てにおいて、慢心せず常によりよい変化を模索していくことをお約束したいと思います。そして、その成果は、ステークホルダーの皆さまに還元していく方針です。今後もステークホルダーの皆さまが安心して当社グループとの関係性を深めることのできるよう、成長をキーワードに企業価値の向上に取り組んで参ります。

以上

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