“豪州貿易のパイオニア”と称される房治郎の教えは、現在の経営理念に受け継がれ、今もなお兼松の社員のDNAとなっています。以下は、創業者の兼松房治郎が遺した言葉です。

1889年8月、房治郎が44歳にして「豪州貿易兼松房治郎商店」(現兼松)を創業した時の決意の言葉です。明治時代の日本人にとって、「わが国の福利」とは経済を発展させるための共通した社会理念で、昨今では一般公共の利益、社会貢献、国際社会への寄与、人類への貢献などに代わり、企業の経営理念として広く謳われるようになっています。房治郎は、豪州貿易によって「わが国の福利」を増大させるため、創業後、8回も豪州に渡航するなど、心血を注いで事業の発展に尽力しました。

取引先を大切に―という精神をたたき込んだ、房治郎の口癖です。英語に置き換えると、“Customers are always right”。商売、ビジネスをしていく上でお客さまほど有り難いものはないことを表現しています。お客さまとは、仕事を教えてもらい、お金を儲けさせていただく存在であり、また、売先も仕入先も大切なお客さまです。

房治郎はこの言葉を青年時代に教わり、生涯にわたって信条としていました。本来、労働と報酬は貸借対照表の「借方」と「貸方」のようにバランスのとれているのが正しい姿かもしれません。しかし、収入にこだわりなく、努力を出し惜しみせず、むしろ努力超過で働こうというのが房治郎の信条でした。

商売と言えども金儲けだけの追求ではいけないという悟りと信念、人生の知恵から生まれた言葉です。明治の実業家には金儲けが自己目的ではなく事業には事業の理想があり、収益は副次的産物という思想が培われていました。房治郎はまた、「もうかりさえすれば何をしても良い、という考えを起こすな」という金銭を超えた、企業の社会的責任につながるビジネス観を持っていました。