Digital Transformation (DX)

ヒト・モノ・コトで拓く新時代

DX推進委員会委員長メッセージ

藤田 彰彦

上席執行役員
DX推進委員会委員長

 当社は2025年8月に中期経営計画を「integration 1.1」へとアップデートし、企業価値の更なる向上に向けた取組みを加速させています。DX領域においては、これまで「教育・予算・実践」を柱とした基盤整備に注力し、社内の変革マインドの醸成に取り組んで参りました。並行して、かねてより構築を進めてきた次世代型新基幹システム「hibiki」の開発プロジェクトも、本格稼働に向けて順調に進捗しています。
 AIをはじめとするデジタル技術が従来のビジネスの仕組みを根底から変えつつある現在、当社の持続的な成長を牽引するためには、AIの本格活用を軸とした抜本的な事業変革が不可欠です。この認識のもと、新基幹システム「hibiki」については、現場でのAI 活用を前提とした「AI Ready」なシステム環境の設計・開発を進める一方で、これを現場で実践できる組織環境づくりと従業員スキルの底上げにも積極的に取り組んでいます。こうした取組みを通じて、「ヒトづくり(人材育成)」「モノづくり(システム変革)」「コトづくり(業務変革)」の三位一体改革を本格化させ、更なる事業成長を目指して参ります。
 まず「ヒトづくり」については、DXを推進する最大の原動力は現場の「人」であるとの信念のもと、現場力を高める人材育成の取り組みを着実に深化させています。 2026年3月期より実施している全社的なDX研修を土台として、本年度は新たに「新入社員向け」「管理職向け」「経営層向け」といった階層別研修プログラムを拡充し、組織全体のデジタルリテラシーを一段と引き上げることに取り組みます。こうした学びの機会の提供と並行して進めているアナログな事務作業からの脱却、業務の自動化・効率化を促すことで、現場の最前線における意識改革や取組み姿勢の高度化を図ります。
 次に「モノづくり」の大きな達成目標は、「hibiki」による全社データの統合と集中管理です。長年稼働してきた従来の基幹システムと、商品ごとに分かれていた個別の補助簿とによる分断状態から脱却し、データの中央集中管理へ移行するとともに、全社横断的な物流の大福帳データベースの構築を進めています。こうしたインフラの刷新により、良質なデジタルデータの蓄積が加速し、従来システムでは成し得なかったAIとのシームレスな連携が可能となる「AI Ready」な環境の構築を目指して参ります。
 さらに「コトづくり」においては、2026年3月期まで推進してきた社内の業務効率化にとどまらず、一部の事業部門において外部パートナーとのシステム連携を可能にする「顧客と直接繋がるシステム基盤」を先行して構築しました。2027年3月期は、この確かな実績と成功モデルをさらに拡大・発展させ、サプライチェーン全体を顧客と共に最適化する活動を進めて参ります。
 これら「ヒト・モノ・コト」の三位一体の改革を力強く推し進めることで、当社DXの持続的な展開を加速させていきます。今後も、こうした変革を積極的に推進し、ステークホルダーの皆さまと共に、新たな価値創造に挑戦して参ります。

DX推進体制とDX戦略

DX推進体制とDX戦略

取組み状況

~ヒトづくり関連~
DX人材の育成と挑戦を支える仕組みづくり

 当社では、DXを推進する人材と挑戦を支える仕組みを多層的に整備しています。兼松ユニバーシティのDX研修は、座学と実践を通じた全社的なデジタルリテラシーの底上げに加え、業務課題の解決に挑む社員に対して、「DX道場」が起案の壁打ちや案件の練り上げを支援しています。そこで磨かれた案件は、DX推進委員会での審議を経てPoC予算を割り当て実証へと進み、DX開発案件に仕立てて現場に本番リリースしていきます。さらに、現場にリリースされた優れたDX案件の取組みを表彰する「DX推進委員長賞」を2026年3月期より新設し、挑戦が次の挑戦を生む好循環を醸成しています。学ぶ場、挑む場、認め広げる仕組みが一体となることで、こうした挑戦の輪を全社へと広げています。

~モノづくり関連~
業務用AI文書読み取りアプリケーション「AI Reader」

PDF文書を扱う業務の効率化を目的に、生成AIを活用した文書読み取りアプリケーション「AI Reader」を自社開発し、社内展開を進めています。従来、船荷証券や入庫報告書など形式の異なる文書から必要な情報を読み取りシステムや台帳へ転記する作業は手作業に頼っており、業務負荷や入力ミスが課題となっていました。

 AI Readerは、読み取り項目を自然言語で指示するだけで必要な情報を自動で抽出・整理できることに加え、読み取った情報を業務に適した形式へ変換して出力するなど、単なる転記にとどまらない柔軟なデータ活用を実現しています。本アプリは取り扱う商材ごとに異なる対応が必要であり、現場に寄り添いながら機能を段階的にエンハンスメントできる体制を整えて導入を進めています。今後は、読み取ったデータの基幹システムへの連携を推進し、更なる業務効率化と業務品質の向上に取り組んで参ります。

~コトづくり関連~
牧草輸入デジタルプラットフォーム「Hayポータル」

牧草の輸入を取り巻くサプライチェーンにおいては、生産地から輸送、受発注、納品に至るまで多数の関係者が関与する一方、FAXや電話、メールを多用したアナログな流通管理が主流であり、情報の遅延や伝達ミス、事務負担の増大といった構造的課題が存在していました。当社は、これらの課題をサプライチェーンの最適化の観点から捉え、関係者間の情報連携をシームレスにする基盤づくりを目的に、グループ会社と共同で、牧草輸入に特化した業界初の情報共有型プラットフォーム「Hayポータル」を開発しました。

 Hayポータルは、受発注・出荷・輸送といった一連のプロセス情報を一元化し、関係者がリアルタイムかつ正確に状況を把握できる仕組みです。これにより、分断されていた契約内容や船積情報が可視化され、従来生じていた情報のタイムラグや事務負担が大幅に軽減されました。煩雑な事務や問い合わせ対応から解放され、顧客が本業である経営や飼養に専念できる環境づくりを支援しています。運送会社においても、納品日調整やトラック手配をポータル上で一括管理することで、トレーサビリティと透明性が向上し、伝達ミスや認識の不一致を未然に防ぐ体制が整っています。

 Hayポータルは単なる業務効率化ツールではなく、サプライチェーン全体のリアルタイムな情報を提供するという新たな価値をもたらしています。その結果、アナログな業務に費やしていた時間やリソースを、価値創出や関係性強化といったより付加価値の高い業務へと振り向けられるようになりました。今後は、通関情報など連携範囲を広げるとともに、蓄積データのAI活用による需要予測や物流最適化の高度化を図ることで、牧草の安定供給と効率的な流通を支える「牧草エコシステム」を構築し、サプライチェーン全体の持続的な価値向上に貢献して参ります。