Digital Transformation (DX)

柔軟かつ実行力のあるDX推進でサプライチェーンに変革を

DX推進委員長メッセージ

藤田 彰彦

上席執行役員
DX推進委員長

柔軟かつ実行力のあるDX推進でサプライチェーンに変革を
 2024年4月から開始した中期経営計画「integration 1.0」では、DXを重点強化分野の一つとしています。当社は、グローバルに事業を展開する商社として、これまで培ってきた多様な産業知見、パートナーとの信頼関係、そしてグループ各社の持つ豊富なリソースと専門性を最大限に活かしながら、DXを全社的に推進しております。顧客企業が直面する複雑かつ多様な課題に対し、グループ横断での連携を通じた最適なソリューションをご提供することで、サプライチェーン全体の変革を目指しています。その実現に向けて、「教育」「予算」「実践」の3つの柱を中心に、DXの推進体制を強化しています。
 教育面では、今年度(2026年3月期)よりDX研修を新たに開始し、個々の社員が変革の担い手となれるよう、グループ全体での現場課題の発見・解決力の養成に力点を置いています。設計・講師には外部から専門家を招聘し、実践的なカリキュラム構成と、受講者の意見を随時フィードバックする仕組みを通じ、基礎的な知識から現場課題の抽出・改善提案に至るまで、段階的に学習できる教育プログラムを整備しています。DX研修の受講者が、それぞれ所属する現業部門で新たなDX案件の企画・立案を行うことで、全社的なDX化を加速させます。さらに、本年4月に設立した兼松シードポート株式会社のメンバーが、現業部門と一体となってDX案件の開発を推進することで、開発スピードの向上にも貢献して参ります。
 予算面では、通常の部門予算・事業予算とは別に全社横断で活用できるDX投資枠・執行基準を設定しており、現場の挑戦を阻むことなく、新たな取組みにも積極的にトライできる環境を整えております。費用面での障壁を大幅に低減することで、グループ会社や現場に過度な負担をかけることなく、現場発の実証実験や新規事業創出に繋がる案件が複数誕生し、失敗を恐れず挑戦できる企業風土の醸成にも寄与しております。
 実践面においては、現場やグループ各社から寄せられる多様な業務課題やアイデアを、立場や部門を超えてオープンに議論・具体化できる「DX道場」と、そこで熟成された案件のPoC(概念実証)実施の是非を審議する「DX推進委員会」という、二層構造の取組みを推進しています。この仕組みにより、現場の最前線で感じる課題やひらめきをスピーディーに吸い上げ、IT企画部DX推進課メンバーが相談役となってアイデアを実務に適用できるレベルに落とし込むと同時に、それに必要な技術適用検証を実施できるPoC案件に組み立てています。さらに、現場社員が通常業務に加えてDX活動にも前向きに取り組めるよう、今年度から「DX推進委員長賞」を新設いたしました。効果的なDX推進施策の表彰を通じて、自部署の課題にも気づく機会を提供するとともに、現場の更なる挑戦を支援します。
 こうした「教育」「予算」「実践」それぞれの取組みが相互に補強し合うことで、私たちはDX化の推進、そしてと社員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの向上を図り、デジタル商社としての地位を確実に進めます。今後も、柔軟かつ実行力のあるDX推進を通じて、より良い変革を従業員とお客様と共に実現して参ります。

DX推進体制

具体的な取組み

基幹システム刷新プロジェクト「hibiki」

現在、当社は「hibiki(Harmonized Integrated Bridging System for Innovative Kanematsu Infrastructure) 」と名付けた基幹システム再構築プロジェクトに取り組んでいます。本プロジェクトは、経営のスピード向上や経営資源の最適配分を実現するデータドリブン経営の基盤構築、および兼松グループのDX加速を目的としています。

 hibikiは単なるシステム更改にとどまらず、システム提供側と利用側の調和を基本コンセプトとし、プロジェクトを推進しています。また、安定性が求められる基幹系システムと戦略的機能とを分離したうえで、SaaS型 ERPである「Oracle Cloud ERP」を採用し、最新テクノロジーを活用した業務プロセス改革を進めています。業務の標準化・効率化については「Fit to Standard」アプローチを取り入れながら、DXテーマにも積極的に取り組んでいます。

 さらに、End to Endのビジネスプロセスを通じて外部パートナーとシームレスな連携を図り、AIエージェントの活用により業務品質とスピードの向上にも挑戦しています。SaaS基盤の活用により、従来は手作業であったデータベース設計などの作業がAIにより自動化されました。将来的にはビジネス部門とIT部門が構想したシステムをAIが自律的に開発する時代が到来すると見ています。これにより、IT部門の役割は大きく変化し、よりビジネスデザインに貢献することが期待されます。

 hibikiプロジェクトは、こうした未来を見据え、Oracle Cloud ERPが求める「AIに対して適切な入力を行い、AIの出力を的確に評価できる」人材を育成しながらAIを活用した変革を推進することで、兼松グループの持続的成長と企業価値の更なる向上を目指して参ります。

輸入動静管理アプリケーション「KGスマートブック」

輸入業務におけるサプライチェーンの情報管理および業務効率向上を目的に、船積・契約管理のデジタル化を推進しています。従来、手作業による管理では情報の分散や転記ミスが発生し、業務負荷が課題となっていました。そこで、基幹システムや外部サービスと連携可能なアプリケーション「KGスマートブック」を「Oracle APEX」を用いて自社開発し、ユーザビリティと実用性を両立したシステムを構築しました。

 本システム導入により、情報のデータベース化による精度向上、業務時間の短縮、転記ミス削減の実現を目指しています。さらに、自動トラッキングやAPI連携、電子帳票の活用を通じてヒューマンエラーの抑制にも寄与しています。

 今後は、対象範囲の拡大、業務標準化およびグループ全体での最適化を推進し、国際物流の変化にも柔軟に対応できる体制を構築と、更なるサービス価値の創出に取り組んで参ります。

ヘリコプター部品専用ECサイト「KG HeliX」

航空宇宙部では、ヘリコプター部品販売業務の効率化を目的として、ECサイト「KG HeliX」を構築しました。従来は、お客さまからの見積依頼や注文情報を分散した台帳で管理していたため、業務が煩雑化し、顧客対応に多大な時間を要していました。KG HeliXの導入により、情報の一元管理と見積・注文プロセスの自動化を実現し、現場担当者の業務負担軽減に加え、お客さまに必要な情報をリアルタイムで提供できる体制を整えました。

 今後は、KG HeliXの更なる利用者拡大を図るとともに、業務効率化によってつくり出された時間を新たな付加価値の創出に活用し、事業拡大に取り組んで参ります。