サステナビリティ推進委員会委員長メッセージ
~「儲けは商売のカス」その先へ~

取締役常務執行役員
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
2024年2月、当社はTNFDの提言に賛同し、同フォーラムへの参画を表明いたしました。世界的な喫緊の課題として気候変動問題による温室効果ガス(GHG)抑制が意識されていますが、今の地球は過去1,000万年間の平均と比べて10~100倍もの速度で生物が絶滅するマイナスの状態にあります。より持続的な社会をもたらすための基盤として、当社グループとしても「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」というネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
TNFDフレームワークを活用した自然関連課題の分析により、多岐にわたる当社グループの事業の中でも、牛肉や飼料原料等、当社が輸入トップシェアである商品が多い食料セグメントのビジネスが、多種多様な生物が様々な関係で繋がる生態系サービスに大きく依存していることをあらためて認識しました。
2024年7月より、特に自然へのインパクトが大きいと試算された牛肉事業とコーヒー事業について、自然関連のリスクと機会を当社ウェブサイトに開示しております。
「儲けは商売のカス」
これは、「利益追求よりも仕事の公明性や公益性を重視し、同時に利益が自然と残るような商売をするべきだ」という、創業者である兼松房治郎の言葉です。企業活動を行っていくにあたっての当社グループの根底にあり続ける思想でもあります。
創業者の房治郎は、人生50年と言われた時代、44歳で豪州との貿易に大きな一歩を踏み出し、現在の兼松を創業した人物で、彼の生き方は日本の未来を見据えた挑戦の連続でした。創業当時、房治郎は既に関西実業界の成功者であったにもかかわらず全財産を投げうち、信念をもって豪州事業を進めました。幕末の不平等条約から続く外国商館に独占された貿易商権を日本人の手に戻すという、当時では無謀なチャレンジ・理想に突き進む姿に、関西実業界の面々からは「兼松君狂セリ」と言われたようです。
房治郎を突き動かしたものは何だったのか。「儲けは商売のカス」とする房治郎にとってそれは個人の利益ではなく、日本人がフェアな商売を行うことができ、またそれによって日本人の生活の繁栄を持続的なものとすることだったのではないかと思います。現代の私たちにとっては、生物多様性や自然資本の維持・再興を果たすことで、地球を持続的なものとすることが該当します。
2024年4月よりスタートした中期経営計画「integration 1.0」では、創業者から続く思想も取り入れて、当社の使命を「サプライチェーンをより効率的かつ持続可能なものにする」と定義し、目指す姿を「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」としました。地球の自然を回復軌道に戻せるような持続可能なビジネスを推進し、社会全体の公益性を追求していく所存です。
ESGスコアの改善
下記の表は、ここ4年間の当社グループ ESGスコアの推移です。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)や人権に関する取組み等における開示を充実させてきたことで、スコアは年々改善していますが、向上の余地があると考えています。ESGに関する取組みを加速させ、適切な情報開示とエンゲージメントを通じて、創業者の房治郎が求めた持続可能な社会に貢献する企業として、引き続きサステナビリティ経営と企業価値向上に取り組んで参ります。
兼松グループのESGスコア

サステナビリティ推進委員会における主な議題(2024年3月期)
- ・TCFD開示拡充に関する報告
- ・GHG排出削減の取組み、およびScope1+2の集計結果と増減分析に関する報告
- ・再生可能エネルギーに関する導入助成制度の討議
- ・人権デューデリジェンスの進捗報告
- ・TNFD提言に基づく開示に向けた取組み報告
サステナビリティ推進体制 (2024年4月1日付)
